40~50代の女性であれば、「エクオール」という言葉を聞いたことがあるでしょう。「作れる人は日本人の約半分」というフレーズを聞いて不安になった人もいると思います。今回は「エクオール」とは何か、何に効果があるのかをお話しします。

更年期障害の緩和に期待「エクオール」

顔のほてりや肩や腰の凝り、突然の動悸やめまい、指のこわばり…。加齢に伴い女性ホルモンの分泌量が減ってくると、こうしたいろいろな症状が出ることがあります。これは、閉経前後にみられる更年期障害によるものです。

女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの卵巣からの分泌量減少や、女性ホルモンの分泌を刺激する脳下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌量が増加することによって起こるもので、閉経前後の約10年間にみられる症状です。早い人だと40歳頃からみられます。

「エクオール」は人間の体内で、エクオール産生菌と呼ばれる腸内細菌によって、大豆イソフラボンに含まれる「ダイゼイン」から作られる活性代謝物です。エストロゲンに構造がよく似ており、体内でエストロゲンと似た働きをしてくれるため、更年期にとって心強い成分なのです。エクオールを増やすことで、更年期症状の予防や緩和ができるのではないかと言われています。

大豆イソフラボンが腸内細菌に代謝されて産生

数多くある腸内細菌の中で、エクオール産生菌は10種類ほど見つかっていますが、もともと腸内に存在しない人もいます。ただ、エクオール産生菌が腸内にあっても、それだけではエクオールは生成されません。大豆製品を食べて、大豆イソフラボンの一種「ダイゼイン」があって初めてエクオールが作られるのです。

以前は、大豆イソフラボンそのものがエストロゲン同様の働きをすると言われていましたが、研究が進んだことにより、実際は産生物質であるエクオールに効果があることが明らかになりました。今では、大豆イソフラボンの段階ではエストロゲンのような効果は期待できないのではとも言われています。

産生できるのは半分以下、若い世代ほど割合低い

エクオールを産生できるのは、世界的に見ると日本人の割合は高いものの2~5割程度で、若い世代ほどその割合が低いと報告されています。その理由の1つに、食事や生活習慣が挙げられています。

5年前の平成30年に開催された第33回日本女性医学学会では、非常に興味深い発表がありました(※)。48~69歳女性を対象とした研究で、97%の人がエクオール産生菌を保有していたというのです。産生菌の保有率は高いのにエクオールが作れない人が多くいる理由として、エクオール産生者と非産生者には食事や生活習慣に差があったとして次のことを報告しています。

エクオールを作れる人
・腸内細菌の種類が多い
・短期的な食習慣では、緑黄色野菜・淡色野菜・海藻類・根菜・キノコ・納豆・穀物の摂取
・長期的な食習慣では、根菜・キノコ・野菜類・油ののった魚(青魚)・肉類(赤身)・大豆食品・和菓子・せんべいの摂取

エクオールを作れない人
・腸内細菌の種類が少ない
・短期的な生活習慣では、喫煙、外食が多い、便通が多い、もしくは少ない
・長期的な食習慣では、ラーメンやアルコール類ではワイン、焼酎またコーヒーを多食

健康的な食習慣が大切、サプリの前に見直し

ここからわかることは、単にエクオール菌の有無だけでエクオールが産生されるわけでなく、健康的な食習慣を継続することでエクオールが産生されるということです。エクオールを作れないのではないかと大豆製品を過剰に摂取したり、サプリメントを服用したりする前に、日頃の食事を見直してみましょう。

これは、他の乳酸菌やビフィズス菌など有用菌にも言えることでもあります。単に乳製品や発酵食品などの一部の食品ばかり摂るのではなく、食生活全体を整えることが大事です。腸内環境が整うと、免疫力の向上、便秘改善だけでなく、メンタルの安定や睡眠の質の向上が期待されています。更年期症状の緩和にもつながることでしょう。

参考:第33回 日本女性医学学会における研究発表「エクオール産生能と腸内細菌叢および食習慣ならびに生活習慣関連因子についての検討」

管理栄養士・今井久美